障がい者が就職を目指すために~その3~『健康管理』
『職業準備性ピラミッド』の『健康管理』について
まずは、健康管理についてのお話です。

この図でもお分かりのように、健康管理は一番下で、横幅も一番長いです。
建物でいえば基礎部分。ここがしっかりしていないと、せっかく良い物を建てても何かの災害が起きると壊れてしまいます。
職業準備性ピラミッドの語源でもあるエジプトの古代ピラミッド

切り出した石を積み上げて作られたピラミッド、土の下の見えない部分もしっかりとした基礎ができています。

1.健康管理を構成する4つの柱
就労における健康管理は、単に「病気ではない状態」を指すのではありません。自分の障がいや病気と付き合いながら、働く基盤を自分でコントロールする「自己管理能力」を意味します。具体的には以下の4つの柱で構成されます。
① 規則正しい生活習慣と睡眠の確保
安定した就労には、毎朝同じ時間に起き、体調を整えて出勤するリズムが不可欠です。
- 十分かつ質の良い睡眠: 翌日の勤務に備え、必要な睡眠時間を確保する。
- 食事の管理: 3食をバランスよく摂り、働くためのエネルギーを維持する。
- 清潔保持: 入浴や着替えを怠らず、社会人として適切な身だしなみを整える。
② 体力・持続力の維持と向上
週5日、あるいはあらかじめ決められた契約時間を働き続けるための基本的な体力が求められます。
- 通勤に耐えられる体力: 電車や徒歩での移動、天候の変化に負けない体力を養う。
- 作業を続ける持続力: 1日4〜8時間の勤務時間中、極端な疲労を起こさずに座る・立つなどの基本姿勢を維持できる。
③ 適切な通院と確実な服薬管理
主治医の指示に従い、医療のサポートを自立して受け続ける能力です。
- 自己服薬: 家族や支援者に頼らず、決められた時間・量を自分で管理して飲む。
- 計画的な通院: 仕事に支障が出ないよう、休日や有給休暇を活用して定期的に通院する。
- 自己判断での中止禁止: 「調子が良いから」と勝手に薬を止めず、主治医と相談する。
④ メンタルヘルス(精神面)の安定とストレス対処
仕事における緊張や人間関係の変化に対し、自分の状態を健やかに保つスキルです。
- 気分の波のコントロール: 感情の起伏を仕事に持ち込まず、一定の状態を維持する。
- ストレス解消法の確立: 自分に合った安全な余暇の過ごし方(音楽、散歩など)を持つ。
2. なぜ企業は「健康管理」を最重視するのか?
障がい者雇用での企業面接では、多くのケースでこの「健康管理」の部分を真っ先に聞かれます。ここを企業が厳格に確認する理由は、「不規則な欠勤(突発欠勤)」が業務に与える影響が大きいからです。
- 予測可能性の確保: 企業は「毎日決まった時間に来てくれること」を前提に業務を組み立てます。スキルが少し低くても、毎日休まず出勤する人の方が組織としては信頼できます。
- 周囲への負担軽減: 突発的な欠勤が続くと、その人の分の仕事を他の社員がカバーしなければならず、現場の疲労や不満につながります。
- 長期雇用の前提: 企業は長く一緒に働ける人材を求めています。健康管理ができない状態での就職は、早期離職のリスクが非常に高くなります。
3. 自分自身の「健康管理」を客観視するステップ
就労に向けて健康管理を形にするためには、感覚に頼らず、以下の3つのステップで自己理解を深めることが効果的です。
ステップ1:自分の「サイン(予兆)」を知る
体調やメンタルが崩れる前には、悪い習慣や心身に小さなサインが現れます。
- 睡眠の変化: 寝付きが悪い、夜中に目が覚める、朝起きられない。
- 行動の変化: 人と話すのが億劫になる、部屋の片付けができなくなる、遅刻が増える。布団に入ってもスマホ長く利用する。
- 身体の変化: 頭痛、肩こり、胃痛、食欲不振(または過食)。
ステップ2:対処法(コーピング)をリスト化する
サインに気づいたとき、悪化を防ぐために自分が取るべき行動を決めておきます。
- 自分でできること: いつもより1時間早く寝る、温かいお風呂に入る、就寝前はスマホを触らない、趣味の時間を5分だけ持つ。
- 他者に頼ること: 主治医に相談して薬を調整してもらう、家族や支援者に話を聞いてもらう。
ステップ3:自分の状態を「説明できる」ようにする
面接や職場の面談で、自分の健康状態と必要な配慮を言語化して伝えます。
- 例:「私は〇〇という病気(障がい)があり、毎日〇時に服薬しています。副作用で朝に少し眠気が出ることがありますが、〇時までには確実に目が覚めます。月1回の通院が必要なため、土曜日か、平日の有給休暇を利用して通院させていただくと助かります。」

4. まとめ:土台を固めてから次のステップへ
職業準備性ピラミッドは、下の階層が安定していなければ、上の階層を積み上げることができません。体調が不安定なまま「パソコンのスキル(職務遂行能力)」を磨いたり資格取得ができても、いざ就職したときに力を発揮できなくなってしまいます。
まずは「毎日同じ時間に起きて、同じ時間に行動できること」。
これが就労に向けたスタートラインです。焦って就職活動を急ぐのではなく、まずは就労移行支援事業所や日常生活の中で、自分の健康管理という「最強の土台」をしっかりと固めていきましょう。
次回の私のコラムでは、最初のステップ「日常生活管理」について解説します。
就労移行支援事業所 フィン香椎駅前 代表 屋形 英児
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